甘く苦く君を思う
私の食事が終わってもふたりで公園の中を走り回っていて、側から見るとまるで親子にしか見えなかった。
きっと彼に本当のことが言えたならこうした未来があったのかもしれない。でもそれは無理だ。彼の家族に認められるわけがない。
しばらくすると渚は昴さんと手を繋ぎ戻ってきた。どうしたのかと思っていると、なんだか眠そうだよと彼に言われる。保育園だともうお昼寝の時間は過ぎているだろう。彼とはしゃいでいたから余計に疲れたのかもしれない。私は渚を抱き上げると膝の上に乗せ、背中をトントンと優しくたたく。彼は正面に座り、その様子を眺めていた。するとそんなに時間もかからずにすやすやと寝息が聞こえてきた。
そ規則正しい響きにどこある周りを包む空気が穏やかに感じる。
「……あの日」
彼が口を開いた。
「俺は、沙夜を信じられなかった。あんな言葉をぶつけて、本当に悪かったと思っている」
彼の言葉、ひとつひとつが心の奥に残った古傷を抉り、顔を上げられない。
「本当は信じたかった。でも周りの声に惑わされて……。すごく後悔している。だからマンションにも職場にも行ったんだ。でもすでに沙夜の姿はなかった」
彼のこんな傷ついたような声は聞いたことがなかった。でも私だって傷ついた。あの時に何もかも失った。
「……信じてもらえなかった時点で、私たちは終わっていたの」
私の言葉に彼は声を失ったように息を吐く音だけが聞こえてきた。
「あなたのご両親に反対されたことも、あの言葉も、全部が現実だった。私はお金を受け取るつもりなんてなかったし、そもそもあなたが高倉グループの後継者だなんて知りもしなかった。教えてももらえないほどに私はあなたにとって信用に足る存在ではなかったってことでしょう」
一気に胸のうちをぶちまけた。彼の顔が少し歪んで見えたが、その拳は強く握られていた。
「もうこれでおしまいにしましょう。私たちが会うのは今日で最後。そうでなきゃ、前に進めないから」
私は渚を抱いたままバッグの中に忍ばせておいた封筒を取り出した。あの日のまま手をつけていない。
かすかに震える声でそれを受け取るようにいうが、動かない。彼の胸に押し当てるとようやく手を出した。
きっと彼に本当のことが言えたならこうした未来があったのかもしれない。でもそれは無理だ。彼の家族に認められるわけがない。
しばらくすると渚は昴さんと手を繋ぎ戻ってきた。どうしたのかと思っていると、なんだか眠そうだよと彼に言われる。保育園だともうお昼寝の時間は過ぎているだろう。彼とはしゃいでいたから余計に疲れたのかもしれない。私は渚を抱き上げると膝の上に乗せ、背中をトントンと優しくたたく。彼は正面に座り、その様子を眺めていた。するとそんなに時間もかからずにすやすやと寝息が聞こえてきた。
そ規則正しい響きにどこある周りを包む空気が穏やかに感じる。
「……あの日」
彼が口を開いた。
「俺は、沙夜を信じられなかった。あんな言葉をぶつけて、本当に悪かったと思っている」
彼の言葉、ひとつひとつが心の奥に残った古傷を抉り、顔を上げられない。
「本当は信じたかった。でも周りの声に惑わされて……。すごく後悔している。だからマンションにも職場にも行ったんだ。でもすでに沙夜の姿はなかった」
彼のこんな傷ついたような声は聞いたことがなかった。でも私だって傷ついた。あの時に何もかも失った。
「……信じてもらえなかった時点で、私たちは終わっていたの」
私の言葉に彼は声を失ったように息を吐く音だけが聞こえてきた。
「あなたのご両親に反対されたことも、あの言葉も、全部が現実だった。私はお金を受け取るつもりなんてなかったし、そもそもあなたが高倉グループの後継者だなんて知りもしなかった。教えてももらえないほどに私はあなたにとって信用に足る存在ではなかったってことでしょう」
一気に胸のうちをぶちまけた。彼の顔が少し歪んで見えたが、その拳は強く握られていた。
「もうこれでおしまいにしましょう。私たちが会うのは今日で最後。そうでなきゃ、前に進めないから」
私は渚を抱いたままバッグの中に忍ばせておいた封筒を取り出した。あの日のまま手をつけていない。
かすかに震える声でそれを受け取るようにいうが、動かない。彼の胸に押し当てるとようやく手を出した。