甘く苦く君を思う
「相川さんのお子さんなのですか、もしかして昴様のお子さんなのではないでしょうか。調べると転居し、程なくして出産されています。今現在もおひとりで育てられているところを踏まえても……と思いまして」

思わぬ言葉に目を見開いた。
自分自身でもどこかそうなのではないかと疑っていた。それでも今の状態で沙夜に聞くことはできなかった。
でも何度も渚ちゃんに会うたびに、もしかしたらという思いが頭を何度もよぎった。
部下は一礼すると部屋を静かに出ていった。
執務室に残され、俺はあまりの現実の重さに拳を握り締めた。両親のしてしまったことの大きさ、そして自分の信頼をどうしてここまで失ってしまったのかその罪悪感に胸を焼く。
今度こそ、今度こそ俺は彼女たちを守りたいと強く願う。

「もう逃げるつもりはない」

俺はすぐに立ち上がるとコートを手にとり、車へと向かう。自らハンドルを握るところ実家へ向かった。ハンドルを握る手に無数の思いが絡みつく。沙夜の涙も渚ちゃんの笑顔も自分が守りたいと力が込められた。
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