英雄の妻に転生しましたが、離縁されるようです ~旦那様、悪妻の私を愛さないでください~
 父は、わたしに隠れて新たな借金を増やそうとしていた。問い詰めても、もしものときのお守りだとかわけのわからないことを言って、話にならない。

 再出発を誓ったあの日、父娘で涙を流しながら「もう二度と借金はしない」と交わした約束はなんだったのか。父の言葉は信用できない。ほかに隠しているものもあるかもしれない。

(はぁ、もう嫌だ……。寒いし、上着をもう一枚着てくるんだった……)

 衝動的に家を飛び出したわたしは、近所の公園のブランコでひとり頭を冷やしていた。
 外灯に照らされた時計塔の針は、夜の十時を指している。

 ――キィ、キィ……。

 人の気配がない公園に、ブランコの金具が擦れる音が虚しく響く。

 かじかむ指で、なんとか救いになる情報はないかとスマートフォンを操作した。
 身内の借金について相談を上げている人はたくさんいた。なにか参考になればと目を通したが、寄せられる回答は似たり寄ったり。

『誰かが助けてあげるうちは、お金の問題は繰り返されます』
< 10 / 398 >

この作品をシェア

pagetop