英雄の妻に転生しましたが、離縁されるようです ~旦那様、悪妻の私を愛さないでください~
 薄情としか思えない正論に、ただ苛立ちが募った。
 それならば、父を見捨てろというのだろうか。父が立ち直れないのは、わたしのせいだと。手を差し伸べなければ、父はやがて住む場所すらも失い、まともに暮らせなくなるのは目に見えているのに。

 とはいえ、回答者を責めるのはお門違いだとわかっている。結局は当事者である自分たちでなんとかするしかないのだ。

(お父さんは、考えることを拒否してる。自分に甘くて、楽天的で、今さえ良ければいいと……。だけど、わたしはどうなるの……?)

 娘である自分の幸せを、父は考えてはくれない。そのことに思い至ったとき、心にぽっかりと穴が開いたような気がした。

(悲しい……。ひと晩ここで過ごしたくらいじゃ、なにも変わらないんだろうな……)

 ぽつりと冷たい水滴が頬に触れた。
 しゃりっとした感覚。今日は冷え込むと思ったら、みぞれが降りはじめたらしい。
 風邪でも引いたら、明日の仕事に響いて自分の首を絞めるだけだ。傘もないし、そろそろ家に帰ろうと腰を上げたそのとき、

 ――ミィ……。
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