英雄の妻に転生しましたが、離縁されるようです ~旦那様、悪妻の私を愛さないでください~
 報告が行っているのであれば、話は早い。わたしがこくりと頷くと、彼は何度か瞬きをして、押し黙ってしまった。整った表情からは感情が読み取れないが、わたしの言うことを信じるべきか否か、考えているのかもしれない。

「あの……以前のわたしは、旦那様のことをなんとお呼びしていましたか?」
「ルシウス、と」

 そんな気はしていたが、いきなりの呼び捨てはハードルが高い。

「でしたら……ルシウス様とお呼びしてもよろしいでしょうか」
「――構わない」

 知らず、ホッと息をついた。探り合うような会話でも、冷たい感じはしない。むしろ彼の態度は丁寧で、前向きにお互いを知ろうとする大切な時間のようにも思える。

 ふと大事な相手を立たせたままでいることに気づき、ハッとした。
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