英雄の妻に転生しましたが、離縁されるようです ~旦那様、悪妻の私を愛さないでください~
 どこかで、か細い鳴き声がした。
 この感じは、猫のものだろうか。なんともかわいらしい声だ。

 ――ミィ……ミィ……。

 慎重に耳を澄まし、声の聞こえるほうへと近づいていく。

 公園内の茂みを覗き込むと、驚くほど小さな影があった。猫の赤ちゃんだ。首輪をしていないから、野良猫が産んだか、それとも心ない人間が捨てていったか……。

 毛の色もわからないほど汚れているし、ひどく痩せていて瞼も開けられないほど弱っているようだ。わたしは、ひとりぼっちのその子猫から目を離せなくなった。

 現実的に考えて、自宅で猫を飼うことは不可能だ。けれどもこのまま放置すれば、この子は死んでしまうだろう。

 そっと手を伸ばし、軽い体を持ち上げると、子猫は嫌がるそぶりも見せずに懐におさまった。意を決し、せめて今夜だけでもと腕に抱いたまま、踵を返す。
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