英雄の妻に転生しましたが、離縁されるようです ~旦那様、悪妻の私を愛さないでください~
 驚愕の色を浮かべたイレーヌ姫の顔が、みるみるうちに赤く染まっていく。
 魔女のように吊り上がった目が、キッとこちらを向いた。沸き上がる怒りを、意中の男性ではなく恋敵であるわたしにぶつけるつもりのようだ。

「こんな屈辱を味わわされたのは生まれて初めてだわ! 毒猫アレクシア……馬鹿で即物的で、卑しい根性をした社交界の爪弾き者が! ルシウス卿、あなたは騙されているのよ。その女、記憶喪失のふりをして改心したように見せているけど、そんなの嘘に決まってるんだから!」

 罵倒の言葉を並べられ、強い不快感が沸き上がる。否定したくてたまらなかったが、なにを言っても泥仕合にしかならない。奥歯を噛みしめて、気を静めようと努めた。大丈夫、これくらいは我慢できる――。
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