英雄の妻に転生しましたが、離縁されるようです ~旦那様、悪妻の私を愛さないでください~
「わたしはアレクシアが人生を放棄、いえ、命を譲ってくれた、そう考えています。とても信じられる話ではないかもしれませんが……」

「珍しい話ではあるが、納得できないことはない」

 ルシウス様によれば、この世界では国教の教えに「魂の継承」という理念があるのだという。魂こそが存在の核であり、肉体は器に過ぎない――ひいては、正しい行いをすれば転生の道が開かれるという信仰が定着しているのだと。

 なるほど、それであれば理解が早くてありがたいと考えていると、彼もまたなにかを思案し、呟いた。

「おまえの……いや、君の本当の名は、カスミというのだな。そう呼んだほうがいいのだろうか」

 思いがけない言葉に、心臓が大きく高鳴った。わたしの本質を認めてもらえたような気がして、心が喜びに震えるのがわかる。呼びかけが「おまえ」でなく「君」になったのも、彼なりの気遣いだろうか。
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