英雄の妻に転生しましたが、離縁されるようです ~旦那様、悪妻の私を愛さないでください~
(お気持ちはありがたいわ。でも……)

 問われた内容を、少し吟味してから答えた。

「いえ、この世界では、アレクシアですから。そのお言葉だけで十分です」
「そうか……。だが、カスミという名も、いい響きだと思う」

 不意打ちの優しさに、喉の奥が熱くなる。ルシウス様はなんというか、天然の女殺しだ。
 照れているわたしの様子には気づかずに、彼は視線を卓上に落として言った。

「しかし、元はアレクシアではなかった君が、唐突に今の環境に放り込まれたのだ。さぞ驚いただろう」

 それはもうと思いつつ、自嘲的な笑いを浮かべる。平凡な日本人であったわたしに、彼のような立派な旦那様ができるなんて、嘘のような話だ。
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