英雄の妻に転生しましたが、離縁されるようです ~旦那様、悪妻の私を愛さないでください~
 もともとアレクシアは当家をかき乱す狙いか、なんらかの目的で送り込まれたことは察していた。女ひとりでなにができると高を括る気持ちもあったが、結婚してからこの方、こちらが隙を見せない状況では、彼女も手をこまねくしかなかっただろう。

 手中に敵を飼うような緊張感は、今はない。しかし、ここにきて妙な悩みの種が増えた。

 ――新しいアレクシアを、どう扱ったらいいのかわからない。

 きょとんとしたり、照れたり、恥ずかしがったり、笑ったり。彼女の顔を見ていると、同じ器だからと過去の責を問う気にはなれない。むしろ目を引かれて、いつまででも眺めていたい気にさせられる。俺はこんなに甘い人間ではなかったはずなのだが。

 妻を娶るのは義務であって、それ以上でもそれ以下でもないと思っていたが、結婚生活が想像したより悪くないのかもしれないと思えるようになったのは、きっと彼女のせいだ。
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