英雄の妻に転生しましたが、離縁されるようです ~旦那様、悪妻の私を愛さないでください~
 ちゅ、ちゅ、と位置をずらして、肌が洗礼を受けていく。接吻が首筋を上がってくるに従い、怖いものではないけれども落ち着かないような痺れが生じて、脳天に向けて駆け抜けた。
 これは、なんなのだろう。本当に消毒なのだろうか。いや、きっと消毒だ。

 当面の問題としては、柔らかな彼の黒髪が顎の下に触れ、くすぐったくてたまらない。

「あっ」

 最初に上書きしてもらった位置を強く吸われて、体がピクピクと反応を示す。気がつくと、夢中で彼の頭を抱え込み、しがみつく体勢になっていた。

(こ、こんなにぴったりくっついて……きっと心臓の音が丸聞こえだわ)

 おとがいに軽く歯を立てられ、顎が仰け反る。

「ルシウス様、も、もう……」
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