英雄の妻に転生しましたが、離縁されるようです ~旦那様、悪妻の私を愛さないでください~
 もう十分だと言いかけたとき、視界がぐるんと上向いて、ふかふかの馬車の座面に押し倒された。

「ル、ルシウス様……? ちょっ……ん」

 覆い被さった影が限界まで近づいたと思うと、次の瞬間、唇を奪われていた。

 頭の中に火花が散ったような衝撃を覚え、思考が停止する。
 キスをされている。そう頭で理解すると同時に、感情の奔流が胸の中に湧き上がった。

(嘘……ルシウス様が、わたしにキスを? どうして? なにが起こっているの?)

 微動だにできず、ただ息を止めて待つことしかできない。するとわずかに離れた口元から、吐息混じりの言葉が吹き込まれた。

「アレクシア……目を閉じて」
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