英雄の妻に転生しましたが、離縁されるようです ~旦那様、悪妻の私を愛さないでください~
 ところがルシウス様は、接触する前に彼女の体を容赦なく払いのけた。
 どすんと尻もちをついたイレーヌ姫が、驚愕の表情で彼の顔を見上げる。

「な、なにをするのよ!?」

「先日の夜、庭で言ったはずだ。大事な妻に誤解されては困るゆえ、贈り物や過度の接触は控えてほしいと」

 敬語すら取り去った彼は、汚らわしいものを見る目つきで姫を見下している。

(先日の庭でのことって……)

 彼がいつの話をしているのか、すぐに思い至った。
 贈り物を理由に庭に呼び出された悪夢の夜、ルシウス様はイレーヌ姫の誘惑をきちんと跳ねのけていたのだ。キスしているように見えたのも、おそらくは姫による見せかけの動きだったのだろう。
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