英雄の妻に転生しましたが、離縁されるようです ~旦那様、悪妻の私を愛さないでください~
 まずは、なにから話そうか。街で助けてもらったことに対するお礼、それとイレーヌ姫のこと――頭の中に並べているうちに、彼のほうから改まった調子で頭を下げられた。

「アレクシア。任務とはいえ、これまで気苦労をかけてしまい、すまなかった」
「い、いいえ。わたしは、なにも……」

 謝らないでほしいと訴えると、顔を上げた彼はふっと優しい笑顔を見せた。
 穏やかな瞳に惹かれて、じっと見入ってしまう。彼もまた、目を逸らさなかった。離れがたくてもどかしいこの時間、彼への想いが喉を突いて溢れそうになる。

 ルシウス様はおもむろに手を伸ばし、わたしの肩に垂れていた髪をひと房すくい取ると、それを自らの口元へと持っていき、そっと口づけた。
 絵になる仕草を見せつけられて、胸がドクン、と大きな音を立てる。
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