英雄の妻に転生しましたが、離縁されるようです ~旦那様、悪妻の私を愛さないでください~
 立ち上がった彼は、ルシウス様の返事を待たずに席を離れてしまう。否応なくルシウス様があとを追い、この場にわたしと義母のふたりが残された。

「……」

「あ、あの……」

 重苦しい沈黙が場を埋め尽くす。内心慌てながらも、なんとか間を持たせようと必死で頭を絞った。
 妙案は浮かばず、くじけそうになったそのとき、あちらから動きがあった。

「……お庭を少し歩きましょう。あなたと話をしなければと思っていたのよ」

「は、はい。ぜひ……!」

 案内しようと腰を上げたが、不要とばかりにグレイス様が先を行ってしまう。
 それもそのはず、相手は先代の辺境伯夫人。この屋敷を知り尽くした大先輩を前に、いい格好などできるはずもないのだった。
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