英雄の妻に転生しましたが、離縁されるようです ~旦那様、悪妻の私を愛さないでください~
 ルシウス様が横に身を乗り出して、サイドボードの上の燭台の火を吹き消した。
 これによりベッドの周囲は薄闇に包まれたが、部屋の各所にある光源はそのままなので、気休め程度の変化にすぎない。

 ギシリと寝床が軋む音が、なまめかしく響く。
 中途半端になっていたシャツを脱ぎ捨て、大型の獣のように四つん這いになった彼が、いよいよわたしに狙いを定め、身体の全部を使って押し倒してくる。

「あ、待って」

 柔く手首を捕まれて抗議の声を上げるも、なんの抵抗にもならない。ガードしていた両手はあっさりと取り払われ、頭の両脇のシーツの上に縫いつけられた。

 羞恥心がいっそう高まり、耐えきれずに顔を背ける。逃げだしたくとも指と指を絡められ、微動だにできない。ぎゅっと目をつぶっているのに、肌の上を視線が這うのを感じる。自分ばかり息が上がってしまうのも恥ずかしかった。
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