英雄の妻に転生しましたが、離縁されるようです ~旦那様、悪妻の私を愛さないでください~
(この人がわたしの、この世界での父親……)

 名はルドルフ・ブラッドリー侯爵。王国でも随一の産出量を誇る鉱山を持つ、有数の貴族のはずだ。

 アレクシアとしての記憶はないが、男の髪色や顔立ちが自分と似ているのはわかった。また、落ちくぼんだ目元など、どこか転生前の父と面影が重なって見えるのも不思議だ。

 迷いはしたが、このまま廊下で騒がれては周りに迷惑をかけてしまう。父親であれば危険なことはないだろうと思い、中に入れてもらうよう兵士に話を通した。

 扉を閉めてふたりきりになったとたん、父がうろんな目を向けてくる。

「ほう。ずいぶんといい待遇を受けているようだ」
「ええ、まぁ……」

 話を合わせながら部屋の中心部へと戻り、ソファに腰かけるよう促した。
 向き合って座るや否や、父は上半身を前に傾け、声を潜めて言う。
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