英雄の妻に転生しましたが、離縁されるようです ~旦那様、悪妻の私を愛さないでください~
 真実を知ればさすがの彼も傷つくだろうし、怒りも生じるかもしれない。危機感を感じて、わたしへの気持ちも冷めてしまうかも……。

 頭の中は真っ白で、吐き気がする。今にも胃袋がひっくり返りそうだ。
 ルシウス様と鉢合わせすることを恐れた父が、そそくさと部屋を去っていったことにも気づけないほど、心は千々に乱れていた。


 王との謁見を終え、控え室に戻ってきたルシウス様は、様子のおかしいわたしに気づき、なにかあったのかと尋ねてきた。だが、心を決めるには時間が足りていない。

「あの……じ、実は父が」

 カラカラに乾いた喉で、せめて父と会ったことだけでも伝えようとしたそのとき、外から案内人の声が被さった。

「お時間です。会場にお進みください」
「ああ、わかった」
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