英雄の妻に転生しましたが、離縁されるようです ~旦那様、悪妻の私を愛さないでください~
(な、なんですって……?)

 場は騒然とし、不穏な気配が膨れ上がる。唐突に個人名を出されたわたしは、虚をつかれて立ち尽くすしかない。

 目ざとくこちらの姿を捉えた使者は、大胆にも指を差し向け、非難の意を表した。

「毒々しい赤毛をした娘……あの者が諸悪の根源! 公女を傷つけた大罪人です!」

「おのれ……妻になにを言う!」
「――静粛にせよ!」

 憤慨したルシウス様の怒声と王の号令が重なって響く。
 勅命により混乱の渦に巻き込まれかけた会場内にも、押し殺したような静寂が流れた。
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