英雄の妻に転生しましたが、離縁されるようです ~旦那様、悪妻の私を愛さないでください~
 王太子は軽く笑みを浮かべているが、どこか皮肉めいて胡散臭い。父もまた小狡い顔をしているから、まるで悪党の集会に踏み込んだ気がして居たたまれない。

 なにを言われるのだろうと警戒する矢先、ひんやりとした声がかかった。

「ルドルフの娘よ。おまえを最初の刺客としてルシウスに差し向けたはずが、報告はなしのつぶてで、正直失望していたのだ。だが二矢として放ったイレーヌを煽り、このような好機を手繰り寄せるとは、結果的にいい働きをしたな」

 なにやら褒められているようだがピンと来ず、戸惑いが隠せない。けれども数刻前に父と交わした会話がふと浮かび上がり、繋がりが見えてきた。

 父が「あの方」と呼んで恐れ敬っていた相手は、目の前にいる王太子その人。

 たぶん父は、手持ちの鉱山が枯れて納税もままならないという事実を王太子に知られ、それを公にせず助けてもらう代わりに、いいように使われている。
 その結果、ルシウス様を厭う王太子の意をくんだ父の命令で、わたしはレオパルド家に遣わされたのだ。妻となり、夫の命を内側から狙うために――。
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