英雄の妻に転生しましたが、離縁されるようです ~旦那様、悪妻の私を愛さないでください~
「想定したものとは違ったが、天は我に味方しているようだ。それにしてもイレーヌの暴走ぶり、あれは相当腹に据えかねたのだろうな。気位の高いあの女は、結局ルシウスにも相手にされなかったと見える。お笑い草だ」

「すべては殿下の思惑どおりに運ぶでしょう。ところで据え膳を前に女遊びのひとつもできぬとは、本当に面白味のない男ですな、ルシウスは。ガハハ」

(な、なにを言ってるのよ、この人たち……!)

 わたしが背負わされた重い十字架に加えて、ここに至る苦境がすべて彼らによって仕組まれたものだと思うと、はらわたが煮えくり返りそうだ。イレーヌ姫と関わったせいで夫は少なからず振り回され、わたしは理不尽に恨まれて命まで狙われているのだから。

 怒りに震えるわたしを見てなにを勘違いしたのか、父が甘ったるい声をかけてきた。

「わかっている、この好機を引き寄せたのは、おまえが苦労してルシウスを骨抜きにしたおかげだと言いたいのだろう? 殿下、どうか娘にも相応の褒美をお約束ください。突然矢面に立たされて、驚いているはずです」

「ふむ、そうだな。この件がうまく片づいたら、一生安泰に暮らせるだけの金を与えてやるつもりだから、安心するといい」
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