英雄の妻に転生しましたが、離縁されるようです ~旦那様、悪妻の私を愛さないでください~
 ――バシッ……!!

 強烈に頬を張られて、一瞬目の前が真っ暗になる。平衡感覚を失い、床に手をついた。

 しばらくの間、なにが起きたのかわからなかった。目の前がチカチカして、頬が燃えるように熱い。

「この馬鹿娘が。わしの努力を無駄にする気か! 自分だけ逃れようなどと思うなよ。おまえはこの父の娘であり、共犯なのだ。公国に差し出され拷問のうえ殺されたくなければ、己の成すべきことをやれ。いいな!?」

 暴力的な言葉が、ビリビリと鼓膜を震わせる。一方的にまくし立てた父が足音を鳴らして去っていったあと、再び扉は閉ざされ、ひとりになった。

 しばらくすると、ショックで鈍くなっていた頬の感覚が戻ってくる。焼けるような痛みとともに、悔しさが沸き上がった。

 娘をなんだと思っているのかと、詰ってやりたい気持ちでいっぱいだ。けれどそんなことをしても無意味だということもわかっている。
< 333 / 398 >

この作品をシェア

pagetop