英雄の妻に転生しましたが、離縁されるようです ~旦那様、悪妻の私を愛さないでください~
 狂暴な視線をこの身に受けてから無力な自分に気づいたが、こちら側にはルシウス様がいる。彼に任せておけばなんとかなるはずだ。

 標的をこちらに移した狼魔獣は、じりじりと足を踏み出した。

 しかし、なぜか微妙にわたしと魔獣の視線が合わない。別の人間――少し逸れた場所にいる王太子を狙っているようだ。
 狼魔獣は濁音を重ねたような、不快な声を発した。

『見ツケタ……。我ヲ閉ジ込メタ、憎イ人間。引キ裂イテヤル!』

「なんでこっちを見るんだ……来るな! 来るんじゃない!!」

 王太子は剣を構えているが、足はがくがくと震えて、戦える状態ではない。けれども魔獣はお構いなしに、獲物に向かって突進を始めた。
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