英雄の妻に転生しましたが、離縁されるようです ~旦那様、悪妻の私を愛さないでください~
 それを聞いて、心に爽やかな風が吹き込んだような気がした。目の前に立ち込めていた霧が晴れていく、そんな心地だ。

(本当にいいの……? あなたの足手まといになっても……)

 香澄として存在していた頃から染みついていた、誰にも頼れないという強迫観念。
 本当は助けてほしいと願っていても口には出せず、強がって生きてきた――そんな面倒な自分ごと愛してくれるという人が、今目の前にいる。

(彼を信じたい。わたしはもう、ひとりじゃない……)

 瞳に輝きを戻したわたしを見て、夜空に輝く一番星のようなその人は安心したように微笑んだ。

「伝わったようだな」
「はい……。けれどこの身には、お返しできるものがありません。ですが、こんなわたしを求めてくださるのなら、わたしはあなたに一生を捧げます」
「十分だ」
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