英雄の妻に転生しましたが、離縁されるようです ~旦那様、悪妻の私を愛さないでください~
 嫌な予感がした。慌ててキッチンに行き、ゴミ箱の中の空の容器を見て、愕然とする。

(と、特上肉……!? 節約しないといけないのに、なんで……)

 シールの値段が目に入り、頭の中が真っ白になる。これだけで一週間分の食費の半分が飛んでしまった。今日、疲れた体に鞭打って稼いだアルバイト代も水の泡だ。
 頭にきたが、悪気のない様子の父を叱りつけることもできない。

(お父さんのバカ……)

 父は、思えば昔から経済観念が緩く、自分にも他人にも甘い性格だった。
 良く言えば人のいい、悪く言えば流されやすいこの人は、だいぶ前に知人に騙され、大きな借金を背負わされたらしい。借金を返すために借金を重ね、発覚したときには利子が膨れ上がり、気が遠くなるほどの額になっていたとか――。

 借金問題が引き金になったかどうかは不明だが、それまで父を支えているように見えた母は、数年前に置き手紙を残して姿を消した。文面によれば、よそに癒してくれる人がおり、その人と幸せになるのだと。
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