英雄の妻に転生しましたが、離縁されるようです ~旦那様、悪妻の私を愛さないでください~
     *

 ある日、昼食を済ませたあとの休憩時間中、エレベーターホールにある自動販売機で飲み物を買おうと選んでいると、聞き覚えのある男性の声が聞こえてきた。

「う~、マジだりぃ~……」

 どうやら衝立の向こうの喫煙所で、吉川さんが同僚と雑談を交わしているようだ。

(吉川さん、煙草なんて吸うんだ……。疲れてるのかな?)

 担当上司の意外な一面に驚いて、知らず耳をそばだてた。

 この会社に通いだしてから一週間が経つが、派遣労働者である自分が他部の人と関わることはほとんどない。仕事でわからないことは隣席の吉川さんに聞きながら進めており、それで事足りる。彼に頼りきりになってはいるが、教わったことは一度で覚えるようにして、迷惑がかからないようにしてきたつもりだ。

 吉川さんには感謝しているし、たまには仕事以外でも楽しく話せるよう、彼の好みをひとつでも知れたらと、そう前向きに考えていたのに――。
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