英雄の妻に転生しましたが、離縁されるようです ~旦那様、悪妻の私を愛さないでください~
『ありがとニャ。お詫びといってはニャんだが、君に特別なプレゼント。ねぇ知ってた? 猫は十の命を持ち、十の世界で生きているんだニャ。あたちの命のひとつを、君にあげる。ちょっとつまずいた感があるのはご愛敬ニャ。新しい人生を受け取ってニャ――』

 そっか。なるほど、あなたがわたしを転生させてくれたのね……。

『あたちはもう次の世界に行かなくちゃ。どうか楽しんでニャアン――』

 気持ちは嬉しい。とってもありがたいけれど、猫ちゃん。
 ほら、どうせ斡旋してくれるのなら、もっと平和な世界で、夫婦仲のいい家庭とか、自由に未来を選べる赤子のうちに覚醒するとかね……。

 それに猫ちゃん、アレクシアとしてのあなた、やりたい放題しすぎじゃない!?
 欲張るものじゃないとわかっているけど、できるなら、転生先とタイミングは選ばせてほしかったのだけど――!?

 すでに言葉が通じていないのか、答えは返ってこない。光の粒子は輝きを弱め、霧散するように消えていく。

 わたしのすがる思いは対象を見失い、温かな闇の中に吸い込まれ、溶けていった。
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