君が好きなだけなのに。

現実の恋

「俺、美咲が好き」

同僚からの告白にガタリと椅子を鳴らしてしまう。

「え…?」

あまり好きではないヒールの音も鳴らしてしまう。

帰ろうとしてデスクから立つところだった。

残業は今の会社は推奨していない。

昔の癖で長く残ってしまうのは私か同僚の永井(ながい)くんだけだった。

「…え、ぇ?」

あまりに突然の出来事に言葉を失ってしまう。

永井くんとは入社した時からの知り合いだった。

そこまで明るいわけではなく、メガネを寡黙な印象。

けれど綺麗な黒髪に切長の目は見る人を魅了させる力があった。

仕事もでき、上司からの信頼も厚い。

けれど関わりといえば資料のやりとりや、チームを組んだ時に話す程度で。

この告白に至るまでのことはしていないと思っていた。



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