義兄に恋してたら、男になっちゃった!? こじ恋はじめます
【咲夜side】――決意


「……なんだよ、話って」

 流斗に呼び出されて、俺は屋上へやってきた。
 晴れ渡る青空、爽やかな風……と似つかわしくない人物がひとり。

 目の前には、俺を睨みつける流斗。
 さっきから不穏な空気をまとっている。相当怒ってるときの顔だ。

 俺、何かしたっけ? とくに思い当たることはないんだけどな。

「咲夜……」

 その声には、明らかな棘があった。

「な、なんだよ」

 いったい何を言われるのか、ドキドキしながら流斗を見返す。
 ……けど、なんとなく予想はついていた。
 こいつがこんな顔をするのは、きっと――。

「なんで唯さんに、僕とのこと応援するなんて言ったんだよ」

 ほらな、やっぱり唯のことだった。
 っていうか、その話か。

「だって、おまえら、うまくいってるんだろ?
 最近すげぇ仲良さそうだし、誰が見たってお似合いのカップルだ。
 ――それに、唯もおまえと一緒にいると、すごく幸せそうだしさ……」

 精いっぱいの皮肉を混ぜて、そう言ってみた。

「何、言ってるんだよ!!」

 突然の怒号に、ビクッと体が跳ねる。
 怒気をはらんだ声と、睨みつけるような目――。

 こんなに怒ったこいつ、初めて見た。
 まさか、あの冷静な流斗がここまで怒りをあらわにするなんて。

 流斗は鬼の形相で俺に詰め寄ってくる。
 その勢いに気圧されて、思わず一歩後ずさった。

「な、なんで怒ってんだよ!
 俺は本気で、二人のこと応援しようって……」

「本気で言ってるの?」

 その言葉とともに、流斗の鋭い眼差しが俺を貫いた。

 こいつ……本気だ。
 親友の真っすぐな気持ちが、容赦なく伝わってきて――背筋がひやりと冷える。

「……ああ、本気で思って……」

 言いかけて、言葉が詰まった。
 なぜか、その先が出てこない。

 俺、もしかして――。

「ほら、やっぱり……本当はそんなこと思ってないんだろ?
 咲夜は俺と唯さんが一緒になるのが嫌なんだ。
 そうだろ? なんで素直になれないんだよ」

 流斗がイラついたように言葉を吐き捨てる。
 責められているうちに、こっちもだんだん腹が立ってきた。

「なんなんだよ、さっきから! 責めるようなことばかり言ってさ。
 おまえだって嬉しいんだろ? 唯が自分のものになってさ。
 よかったじゃねぇか、ずっと好きだったんだろ?」

 そう言った瞬間、流斗の表情がふっとゆるんだ。
 どこか諦めたような、寂しげな笑顔。

「ああ、そうだね。……嬉しいよ。
 それを、唯さんが本当に望んでいるならね」

「え?」

 さっきまで威勢のよかった流斗が、途端に沈んでいく。
 肩を落とし、静かに目線を下げた。

「わかってるだろ? 唯さんの気持ちは、僕にないよ。
 昔から、唯さんが想っているのは――」

 顔を上げた流斗の瞳が、まっすぐ俺を射抜く。

 その瞳は、哀しみを湛えながらも、揺らぎのない強さを秘めていた。

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