義兄に恋してたら、男になっちゃった!? こじ恋はじめます

「これでも被っとけよ」

 兄がそっと帽子を私の頭に乗せてくれた。

 きっと、変身したことへの気遣いだろう。
 体格が大きく変わるわけじゃないし、顔だってほとんど同じ。
 だから、じっくり見られでもしない限り、正体がバレることはない。
 ……でも、もし知り合いに見られたら、いろいろややこしい。

 だからこそ、兄のこういうさりげない優しさが、じんわり心に染みる。
 まるで私の戸惑いや不安を全部見透かしているみたいで――胸がふんわりあたたまる。


 そのまま、私たちは手をつないで、仲良く帰路についた。

 ところが途中で、また私は唯へと戻ってしまった。
 なんとも、今回はずいぶん早い。

 発作は苦しかったけれど、隣に兄がいてくれたおかげで心細くはなかった。
 手を離さず、じっと見守ってくれるその存在が、何よりも心強くて、安心できた。

 変身のあと――
 ふたりで顔を見合わせ、そっと笑い合う。

「今回、早かったな」

「ほんとに……まったく、慌ただしいんだから」

 ため息をつきながら、私は目深にかぶっていた帽子をそっと取った。

 ふと兄と目が合い、ふたりしてまた笑い合う。
 そして、もう一度、手をつないで歩き出した。


 愛おしい――。
 この手のぬくもりから、あたたかな想いがまっすぐに伝わってくる。

 家まであと少し。
 すでに日が暮れ、外灯の明かりの中を二人で並んで歩いていく。

 ふっと息を吐いた。

 大丈夫。心はもう揺れていない。

 私たちは決めていた。
 この想いを、ちゃんと伝えよう。

 ――お父さんにも、お母さんにも。



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