義兄に恋してたら、男になっちゃった!? こじ恋はじめます

「……」

 特に何も感じない。
 本当に、元に戻ってるのかな?

「どうした? 何か変化あるか?」

 兄が少し期待したように私を見る。

「ううん、特に……」

 その返事に、兄の眉がぐっと寄った。

「おい! 本当に元に戻ってるんだろうな!?
 もし嘘だったら、おまえどうなるかわかってんだろうな!」

 怒鳴りながら兄が振り返る。
 ――けれど、そこに男の姿はもうなかった。

 さっきまで確かにそこにいたのに、まるで煙のように消えていた。
 辺りを見回しても、影ひとつ見当たらない。

「しまった。逃げやがったな!」

 兄は悔しそうに地面を思いきり蹴った。

「くそ……っ、やられた」

 その場に力なく座り込み、悔しそうに唇を噛む。
 肩を落とした横顔が、なんだか切なかった。

 私のために、必死になってくれる。
 そんなお兄ちゃんが、どうしようもなく愛おしい。

「もういいよ、ありがとう。
 ……とりあえず、もう遅いし、帰ろ?」

 私が微笑むと、兄は一瞬だけ戸惑ったような顔を見せ、それからそっと微笑んだ。

 手を伸ばすと、兄の手が静かに重なる。
 触れ合った手が、あたたかい。

 たとえ何があっても、大丈夫。
 そう、心から思えた。



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