義兄に恋してたら、男になっちゃった!? こじ恋はじめます

 そのあと、父が用意してくれていた女子用の制服に着替えた。
 こんなことがあろうかと思って準備していたらしい。
 用意周到な父に感謝だ。


 理事長室を出て、兄と二人で校門をくぐる。

 昼下がりの空は、どこまでも青く澄んでいて、太陽もまだ高い位置にある。
 授業中だからだろうか、校舎の窓からは教室の気配が静かに漂っていた。

 ふと隣を歩く兄に目をやる。

 付き添ってくれるのはありがたいけれど、
 兄を巻き込んでしまった気がして……なんだか申し訳なくなる。

 そんな私を気づかってか、兄が明るく話しかけてきた。

「しかし、何がきっかけなんだろうなあ。今日はびっくりしたよな。急に戻るんだもんな。
 しかも戻るときはけっこうしんどいんだろ?
 まあ、あんま気にすんなよ。そのうちなんとかなるって」

 兄がニカッと笑う。
 あっけらかんとした明るい笑顔。

 こういうところ、本当に羨ましい。

 兄はどちらかといえばポジティブ。私は……ネガティブな方。

 でも――そういう兄の人柄に、何度も救われてきた。
 一緒にいると元気をもらえるし、居心地がよかった。

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