義兄に恋してたら、男になっちゃった!? こじ恋はじめます
考え込むことの多い私にとって、兄の明るさはいつもそっと寄り添い、支えてくれる。
ふと兄が空を仰ぎ、何かを思いついたように声をあげた。
「なあ、公園に行ってみようぜ? 何か手がかりがあるかもしれないし」
確かに……行ってみる価値はあるかもしれない。
まさか、まだあそこにクレープ屋がいるとは思えないけど。
何か手がかりが掴めるかもしれないもんね。
「うん、行ってみよう」
私が笑顔で答えると、兄も嬉しそうに笑った。
公園に着くと、案の定クレープ屋の姿はなかった。
「やっぱりいないよな。他にクレープ屋のことを知ってる人、いないかな」
兄がきょろきょろとあたりを見まわす。
平日の昼下がり、広場はひっそりとしていて、ベンチで日向ぼっこをしているお年寄りと、犬の散歩をしている近所のおばさんくらいしかいない。
一応声をかけた兄だったが、しょんぼりしながら戻ってきた。
「ダメだ。知らないってさ。それどころか、昔話を延々と聞かされる羽目になった」
兄はがっくりと肩を落とす。
「ふふっ、もういいよ。たぶん無理だと思ってたし。
でも、私のために一生懸命になってくれるだけで嬉しい。帰ろ?」
私が手を差し出すと、兄は驚いたように私を見つめた。
「なに?」
そう聞くと、兄は小さく首を振る。
「ううん。なんでもない。さ、帰ろうぜ」
兄は私の手をぎゅっと握り、歩き出す。
その手の温もりを感じながら、私もそっと握り返した。