義兄に恋してたら、男になっちゃった!? こじ恋はじめます

 そのとき、兄がひょいと隣に座ってきた。
 肩がかすかに触れそうな距離に、思わず息を呑む。

 ミルクの湯気に紛れるように、鼓動が静かに速まっていく。
 声をかけるでもなく、二人の間に小さな沈黙が落ちた。

 何か言いたそうで、でも迷っているような気配が伝わってくる。
 私はミルクを見つめながら、ただ静かに言葉を待った。

 やがて、兄がぽつりとつぶやいた。

「なあ、唯……おまえ、本当に流斗のこと……」

 そこで言葉が途切れた。

 私は兄の顔を覗き込む。
 兄は何か考え込むような、どこか真剣な表情でうつむいている。

「どうしたの?」

 問いかけると、兄はふいに顔を上げ、私をじっと見つめてきた。
 その視線が、まるで何かを伝えたがっているように揺れている。

 兄はそっと口を開いた。

「……えっと、流斗っていい奴だろ。
 優しいし、賢いし、ルックスもいいもんな。ま、全部俺には敵わないけど」

 冗談めかしてニヤッと笑う。

「自分で言う?」

 私が吹き出すと、兄もつられて笑った。

「まあ、唯が流斗に惚れるのもわかるよ。……おまえが本気なら、俺は……」

 そう言いかけたところで、タイミング悪く父がリビングに入ってきた。

「咲夜くん、唯。お風呂空いたから、どっちか入っておいで」

「あ、はーい!」

 私が返事をして兄に視線を戻すと、兄は口を半開きにしたまま固まっていた。


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