義兄に恋してたら、男になっちゃった!? こじ恋はじめます
兄の顔が、一瞬だけ悲しげにゆがんだ気がした。
でもそれもすぐに、いつもの笑顔に戻る。
「おう、じゃあ、俺いこうかな……お先」
「え? ……うん。あ、さっき何か言いかけた?」
気になって声をかけると、兄は一瞬目を伏せてから、ふっと笑った。
「ううん、いいんだ。――また今度」
そう言って、兄は軽く手を振りながら廊下の方へ歩いていった。
その笑顔は、ほんの少しだけ寂しそうで。
どうしたんだろう。
流斗さんの話をしていたみたいだけど。
まさか、嫉妬してるとか?
いやいや、そんなわけ……。
そう思いながらも、私は兄の背中に目が釘付けになる。
さっきの態度や反応が、妙に気になってしかたなかった。
見えなくなるまで、ただじっと、その背中を見送っていた。