義兄に恋してたら、男になっちゃった!? こじ恋はじめます

 その日、私は兄が言っていた約束について確認するため、父に尋ねてみた。

 すると父はきょとんとした顔で首を振り、そんな約束は知らないと言う。
 そして休日のお出かけについては快く了承してくれた。

 つまり、兄は嘘をついていたということになる。

 どうしてそんなことを?

 疑問は残るけれど、私には見当もつかない。
 とりあえず兄に確認してみたものの、うまくはぐらかされてしまう。

 そして――それどころでなくなってしまったのは、そのあとだ。

 私に彼氏ができたと知った父と母が、もう大騒ぎ。

「どんな人なの?」
「写真は?」
「どこで知り合ったの?」

 と質問攻めに遭い、兄の嘘のことなんてすっかり頭から抜け落ちてしまった。

 ああ、そういえば。
 両親にお付き合いのことを報告するの、すっかり忘れていた。

 だってまだ“仮”だし。いいかなって思ってたんだけど。

 とりあえず「彼氏ができた」ってことだけ伝えてみた。
 相手が流斗さんだということは伏せて。
 だって、なんだか恥ずかしいんだもん。両親は流斗さんのこと、よく知ってるし。

 いろいろからかわれそうだし……そういうのは、兄だけでお腹いっぱい。


 ようやく、両親の攻撃から解放された。
 その足でキッチンに立ち、私はホットミルクを作る。
 それを手に、リビングのソファーへと腰を下ろした。

 ほっと一息。湯気の立つミルクを、そっとひと口含んだ。

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