【書籍化】幼馴染のエリート外交官にカラダから堕とされそうです
 もう、あれから七年。私にとって渡欧する彼を拒んだことは大きな出来事となっているが、彼の記憶にはうっすら残っている程度だろう。あの日、彼は「わかった、じゃあな」と言って、フランスへと旅立ったのだ。応対に戸惑いながらも、これまで通り接した。


「男にフラれて飲んだくれている妹を迎えに行けとは、柊のやつ、相変わらずシスコンだな」
「……シスコンじゃなくて心配症ね。奏君は、いつ帰国したの?」


 一応柊兄の威厳を守りながら、彼の動向を尋ねてみる。


「さっきだよ。この春から、霞が関に帰ってくるから準備のために」


 相変わらず気さくな彼に安堵する一方で、心臓が一気に加速しだす。

 ――奏君が日本に帰ってくる。

 夢を叶えた奏君は、現在も総合職のキャリア外交官として働いている。
 数年おきに海外の在外公館勤務と日本の外務省本部勤務を繰り返すのだが、二年間の在外研修とフランス総領事館で五年間の在外公館勤務を終えた彼は、四月からの拠点はこっちになるようだ。

 通常なら総合職の在外勤務は三年ほどだと聞くけれど、奏君の場合はフランス国内の重要ポストを任されたらしく、その任期が延びたのだという。
 彼の堅実な性格と語学力を思えば、納得の結果だった。


「……また世話になるだろうが、よろしく」


 関係を築こうとするような口ぶりに激しく戸惑う。
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