【書籍化】幼馴染のエリート外交官にカラダから堕とされそうです
「柊兄、私には言ってくれないけれど、彼女いるよね? その……盗み聞くつもりはなかったんだけれど、たまたま聞いちゃって――」


 色素の薄い奏君の綺麗な目が、大きく見開く。 

 彼女の存在に気づいたのは、まだ両親が生きていた柊兄が大学生で私が高校生の頃だろうか。
 見るつもりはなかったのだが、たまたま柊兄の後ろにソファーに座ったとき、デートの約束をしている初々しいメッセージが見えてしまった。

 身内贔屓をするわけではないけれど、ひょうきんで物腰が柔らかく、整った顔立ちの柊兄は昔から女性にモテていた。ただ、誠実で真面目な性格で、両親が度々海外へ行く際に私の面倒を任されていたこともあり、恋人や女性の影は全くなかった。だから初めてその話を知ったときは驚いたものの、それ以上に柊兄にとって大切な人が増えたことが本当に嬉しかった。今でもよくバルコニーで楽しげに電話していて、現在まで順調に続いている。
 
 けれども、一週間前に偶然聞いてしまった。


『結婚は、もう少し待って欲しい』


 夕飯が出来たと声を掛けようとした私の動きは、ピタリと止まった。


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