【書籍化】幼馴染のエリート外交官にカラダから堕とされそうです
 居酒屋『ひとやすみ』は、人情に厚い(やす)叔父さんと、気さくで面倒見のいい都叔母さんが経営する居酒屋だ。
 週末の夜のこの店は、会社帰りでサラリーマンでぎわっている。
 両親を亡くした私にとって実家のような場所で、叔母の都さんは、母のような存在でありながらも、なんでも話せる親友のような存在でもある。
 邪魔になることは分かっているんだけど……都さんの優しさに甘えここで愚痴を聞いてもらっていた。

(さすがに、彼らが会社でシていたとは言えなかったけれど……)

 こんな心境で、兄とふたりで暮らすマンションへ帰宅すれば、私の心境に敏感な兄にはすぐにバレてしまう。


「……柊兄(しゅうにい)になんて言おう。『楓がようやく結婚かぁ~!』なんて楽しみにしてくれていたから、きっとガッカリするだろうなあ……そう考えると、言えないよ……」


 柊兄こと木下(しゅう)は、五歳の離れているたったひとりの家族。
 大学病院で小児科医をしており、七年前の――柊兄が二十五歳、私が二十歳のときにに両親を亡くしてから、これまでずっと私を傍で支えてきてくれた存在だ。
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