行き倒れ騎士を助けた伯爵令嬢は婚約者と未来の夫に挟まれる
25妹
フレンが街でフードを深く被った女性から未来への戻り方を聞いていた頃。フレデリックとアリシアは話をしていた。
「メリッサは、実の妹ではないのです」
アリシアの言葉に、フレデリックは目を大きく見開いてアリシアを見る。
「そんなの初耳だけど」
「メリッサのことを思って公表していませんが、今回のこともありますし、何よりフレデリック様は私の夫となる方。話すべきだと思うので打ち明けますが、メリッサは、父の弟が外で作った愛人の子供だそうてす。愛人はメリッサを産んですぐ病死したらしいのですが、父の弟夫妻はメリッサの引き取りを拒んで、父に押し付けたそうです」
アリシアの両親はメリッサを気の毒に思って引き取り、アリシアと分け隔てなく可愛がった。
「私とメリッサはひとつ違い。私がメリッサが実の妹でないと知ったのは十歳の頃でした。小さかった私はよくわからなかったけれど、メリッサのことが可愛くて好きだったので、ずっと変わらずに妹として接してきました」
だが、アリシアの家に仕えるメイドたちは違かった。メリッサの出生を知るメイドたちは、メリッサを生まれの悪い子供だ、この家にはふさわしくないと言って、陰で冷たい態度を取っていたらしい。
「それを知った私と両親は、せめて私や両親はメリッサのことをちゃんと愛しているとわかってもらおうとしたんです。それで、メリッサの多少のワガママには目を瞑ってきました」
その結果、メリッサは見境なくなんでも欲しがるようになり、制御が効かなくなってしまう。
「きっと私と両親のやり方が悪かったんだと思います。そのせいであんな風になってしまったのだとしたら、今回のことも、強く責める気になれないんです」
ギュッとベッドカバーを掴みながら目を伏せてアリシアは言う。だが、フレデリックは納得がいかない顔をしていた。
「いきさつはわかったよ。メリッサの生い立ちも、メイドたちからの待遇も確かにひどいと思う。もしかすると、アリシアたちのやり方がメリッサの人格形成を歪めてしまったのかもしれない。でも、それと今回の話は違うだろう」
真剣な眼差しでフレデリックはアリシアを見つめた。
「メリッサは、人として君にしてはいけないことをした。それはきちんと怒るべきだろう。可哀想だからと腫れ物を扱うように接するのは優しさじゃないし愛でもない。君にとっては愛なのかもしれないけど、メリッサがそれを愛として受け取るかどうかは別だ。現にメリッサは君へ愛を向けているのか?今回メリッサのしたことは愛でもなんでもないだろう。むしろその逆だ」
フレデリックに言われ、アリシアはハッとして顔をあげる。
「それに、なぜメリッサが媚薬なんてものを持っていたのかも気になる。そもそもまだ成人していないメリッサが簡単に手に入れられる品物じゃない。誰かが渡したとしか思えないよ」
(確かに、どうしてメリッサはそんなもの持ってたのかしら……使い方だってどうして知っていたの?)
アリシアの中に不安が広がる。メリッサは誰かに唆されたのだろうか?
コンコン
「フレデリック、いるか?」
ドアの外から、フレンの声がした。
「メリッサは、実の妹ではないのです」
アリシアの言葉に、フレデリックは目を大きく見開いてアリシアを見る。
「そんなの初耳だけど」
「メリッサのことを思って公表していませんが、今回のこともありますし、何よりフレデリック様は私の夫となる方。話すべきだと思うので打ち明けますが、メリッサは、父の弟が外で作った愛人の子供だそうてす。愛人はメリッサを産んですぐ病死したらしいのですが、父の弟夫妻はメリッサの引き取りを拒んで、父に押し付けたそうです」
アリシアの両親はメリッサを気の毒に思って引き取り、アリシアと分け隔てなく可愛がった。
「私とメリッサはひとつ違い。私がメリッサが実の妹でないと知ったのは十歳の頃でした。小さかった私はよくわからなかったけれど、メリッサのことが可愛くて好きだったので、ずっと変わらずに妹として接してきました」
だが、アリシアの家に仕えるメイドたちは違かった。メリッサの出生を知るメイドたちは、メリッサを生まれの悪い子供だ、この家にはふさわしくないと言って、陰で冷たい態度を取っていたらしい。
「それを知った私と両親は、せめて私や両親はメリッサのことをちゃんと愛しているとわかってもらおうとしたんです。それで、メリッサの多少のワガママには目を瞑ってきました」
その結果、メリッサは見境なくなんでも欲しがるようになり、制御が効かなくなってしまう。
「きっと私と両親のやり方が悪かったんだと思います。そのせいであんな風になってしまったのだとしたら、今回のことも、強く責める気になれないんです」
ギュッとベッドカバーを掴みながら目を伏せてアリシアは言う。だが、フレデリックは納得がいかない顔をしていた。
「いきさつはわかったよ。メリッサの生い立ちも、メイドたちからの待遇も確かにひどいと思う。もしかすると、アリシアたちのやり方がメリッサの人格形成を歪めてしまったのかもしれない。でも、それと今回の話は違うだろう」
真剣な眼差しでフレデリックはアリシアを見つめた。
「メリッサは、人として君にしてはいけないことをした。それはきちんと怒るべきだろう。可哀想だからと腫れ物を扱うように接するのは優しさじゃないし愛でもない。君にとっては愛なのかもしれないけど、メリッサがそれを愛として受け取るかどうかは別だ。現にメリッサは君へ愛を向けているのか?今回メリッサのしたことは愛でもなんでもないだろう。むしろその逆だ」
フレデリックに言われ、アリシアはハッとして顔をあげる。
「それに、なぜメリッサが媚薬なんてものを持っていたのかも気になる。そもそもまだ成人していないメリッサが簡単に手に入れられる品物じゃない。誰かが渡したとしか思えないよ」
(確かに、どうしてメリッサはそんなもの持ってたのかしら……使い方だってどうして知っていたの?)
アリシアの中に不安が広がる。メリッサは誰かに唆されたのだろうか?
コンコン
「フレデリック、いるか?」
ドアの外から、フレンの声がした。