行き倒れ騎士を助けた伯爵令嬢は婚約者と未来の夫に挟まれる

26懸念

「フレデリック、いるか?」
「ああ、いるよ」

 フレデリックが返事をすると、フレンが部屋の中に入ってきた。

(フレン様……!)

 出かけているから会えないと聞いていたフレンを見て、思わずアリシアは嬉しくなった。アリシアがフレンを見て少し目を輝かせると、フレデリックはムッとする。そんなフレデリックを見てフレンは苦笑し、アリシアに声をかけた。

「体、大丈夫か?」
「はい、その、色々と申し訳ありませんでした……!」
「いや、俺は別に何もしてないし。お礼は全部フレデリックに言ってくれ」

 そう言って、フレンはアリシアの胸元に目をやり、痕を見てまた苦笑する。それを見てフレデリックはフレンの視界を遮るようにしてフレンへ話しかけた。

「俺に何か用か?」
「ああ、さっき街に行って有益な情報を得たから、三人で話をしたいんだ」
「もしかして、帰る方法が見つかったのか?」

 フレデリックの問いに、フレンが力強く頷く。するとフレデリックとアリシアは驚いたように目を合わせる。

「俺も、メリッサのことで三人で話したいと思っていた」
「あの、それでしたら、ここではなく、フレデリック様の執務室でお話ししませんか?私はこんな姿ですし、一度着替えたいのですが」

 アリシアの言葉に、フレデリックとフレンがアリシアを見てああ、と呟く。

「わかった、執務室で待ってるよ」

 そう言って、フレデリックとフレンは部屋を出る。部屋を出る直前、フレンは振り返ってアリシアを見た。アリシアはそれに気づいてフレンを見ると、フレンは優しく微笑んでから部屋を出ていった。

(フレン様、未来に帰る方法がわかったんだ……)

 一体、街で何があったのだろう。それに、未来に帰れたとしてもそれはつまりフレンがその瞬間死んでしまうということではないのだろうか。
 でもあの様子だとその懸念をあまり気にしていないようにも感じる。何か死なずにすむ方法があるのだろうか?

(フレン様は帰りたいと思っていたし、それが正しいことなのだろうけど……)

 フレンがいなくなる、そう思うと何となく寂しい気持ちになってくる。フレンが来たことで、目まぐるしく日々が過ぎていった。フレデリックとフレンに挟まれ、二人から愛を囁かれ、どうしていいかわからず戸惑っていたが、それがもうすぐ無くなるのだ。

(寂しいと思うなんて、きっと間違っているわよね……。そんなことより、今は目の前のことにちゃんと向き合わないと)

 目をぎゅっとつぶり首をぶんぶんと大きく振ると、アリシアはベッドから降りて身支度を始めた。


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