明治、一目惚れの軍人に溺愛されて
「どうか雪乃さんを、俺の妻に――」

志郎さんの言葉に、父は深く息を吐き、盃を置いた。

「志郎中尉。君の想いは、よく分かった。」

父の声は穏やかだったが、その奥に揺るぎない厳しさが宿っていた。

盃を置き、しばし黙したのち、私をじっと見つめた。

「……雪乃。」

「はい。」

背筋が凍るような緊張の中で答える。

「おまえの気持ちは、どうなのだ。」

その問いに、胸が大きく波打った。

「わ、私の……」

「桐島中尉の言葉は真心だと分かる。だが――それに応えるのはおまえ自身だ。家のためではなく、娘としてではなく、一人の女として……どう思っている?」

父の眼差しは厳しくも、どこか温かさを帯びていた。

私は震える唇を噛み、思わず志郎さんを見た。

彼は膝を正し、まっすぐに私を見返してくる。
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