明治、一目惚れの軍人に溺愛されて
私は自分の部屋に戻ると、しばらく畳に座り込んだまま、震える指を握りしめていた。

胸の奥では、さっきの志郎さんの言葉が何度も反響している。

――諦めない。君が誰とお見合いしようと、俺は君を奪ってみせる。

その熱に包まれながらも、私は思った。

守られるだけではいけない、と。

「……私も、決めなければ。」

立ち上がり、机の上に置かれた小さな鏡を覗き込む。

涙の跡がまだ頬に残っていた。

けれどその奥に映る瞳は、もう迷ってはいなかった。

「このお見合い……なんとしてでも断ってみせる。」

誰に何を言われようと、私は自分の心を裏切らない。

そして――今度こそ。

「志郎さんとの結婚を、お父様に認めてもらう。」

小さく声に出すと、胸の奥に静かな火が灯った。

その火は揺るがぬ覚悟となり、私を支えてくれる。

夜の帳が下りた部屋の中で、私はひとり固く誓った。

次に訪れる試練を、決して恐れはしないと。
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