明治、一目惚れの軍人に溺愛されて
耳元で落ちる声は熱く、揺るぎなかった。

私は彼の背にそっと腕を回し、頷いた。

「……はい。」

その瞬間、世界が涙で滲んで見えた。

けれど心の奥では、確かな希望が灯っていた。

「雪乃、俺は君を愛している。」

志郎さんの低い声が、夜気の中に溶けた。

切なげな眼差しに胸を突かれ、私も震える声で応えた。

「私もです……志郎さん。」

門口だというのに、理性を抑えることはできなかった。

互いに引き寄せられ、唇が重なる。

「ぁぁ……」

思わずため息がもれた。

熱く、切なく、世界がふたりだけになった瞬間だった。

やがて志郎さんは私を強く抱きしめ、耳元で囁いた。

「諦めない。君が誰とお見合いしようと……」

その声には烈しい決意が宿っていた。

「俺は君を奪ってみせる。」

胸が熱くなり、涙が頬を伝う。

恐怖も不安もあった。けれど、この人は本気なのだ。

「志郎さん……」

私はその腕の中で、ただ頷くことしかできなかった。

夜風に揺れる門口で交わされた誓いは、決して誰にも消せないものになった。
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