明治、一目惚れの軍人に溺愛されて
頷くしかなかった。

けれど、父の言葉に心が跳ねる。

また会える――。

それは、私が誰よりも望んでいることだった。

その夜、私はなかなか眠りにつけなかった。

布団に入っても胸がどきどきと騒ぎ、目を閉じれば呉服屋での出来事ばかりが浮かんでくる。

――転んだ子供を抱き上げ、優しく声をかけていた姿。

――父に名乗り、落ち着いた口調で礼を尽くした態度。

そして何より、私に向けてくれた穏やかな笑み。

軍服を着ているのに威圧感はなく、むしろ温かさを纏った人。

帝国軍人は冷たい人ばかりだと思っていたけれど、桐島中尉はまるで違っていた。

その人が自分の名を呼び、再び会えるかもしれないと告げてくれた。

それが嬉しくて、苦しくて――胸の奥が熱くなる。
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