明治、一目惚れの軍人に溺愛されて
「どうして……」

自分でも理由は分からない。

ただ、あの笑顔が忘れられなかった。

再び会える日を思うだけで、眠気は遠のいていく。

私は布団の中で頬を押さえながら、静かに目を閉じた。

一週間後、また会える。

そう信じるだけで、心が不思議と満たされていった。

そして一週間後。

心臓を早鐘のように打たせながら、私は再び呉服屋を訪れた。

けれど、あの軍服姿はどこにも見えなかった。

「……桐島中尉は、もうお見えになられました?」

思い切って女将さんに尋ねると、彼女は小さく首を横に振った。

「それがまだなのよ。きっとお忙しいのでしょうね。」

その言葉に、胸の奥がぎゅっと締め付けられる。

そうだ。

桐島中尉は「また会えるかもしれませんね」と言っただけ。

決して「会おう」と約束されたわけではなかった。

私はその一言を勝手に希望に変えて、一週間も胸を躍らせていたのだ。
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