明治、一目惚れの軍人に溺愛されて
そして桐島中尉は、私のカバンを持とうと手を伸ばした。
「これは……」
思わず私も手を伸ばし、その瞬間――指先が触れ合った。
「あっ……」
驚いた拍子に、カバンを取り落としてしまう。
「すみません。」
慌てて拾おうと身をかがめると、同じように桐島中尉も手を伸ばしていた。
「俺の不注意で。」
低い声がすぐそばで響く。
「いえ……」
顔を上げられず、小さく答えるしかない。
二人の手がかすかに重なり、どちらもすぐに引けなかった。
目線を合わせる勇気がなく、ただうつむいたまま、時が止まったような沈黙が流れる。
母の気配が隣にあるのに、そこだけ別の世界。
鼓動の音が聞こえてしまいそうで、息を潜めた。
ほんの数秒の出来事。
けれど私には、その短い時間が永遠のように感じられた。
「これは……」
思わず私も手を伸ばし、その瞬間――指先が触れ合った。
「あっ……」
驚いた拍子に、カバンを取り落としてしまう。
「すみません。」
慌てて拾おうと身をかがめると、同じように桐島中尉も手を伸ばしていた。
「俺の不注意で。」
低い声がすぐそばで響く。
「いえ……」
顔を上げられず、小さく答えるしかない。
二人の手がかすかに重なり、どちらもすぐに引けなかった。
目線を合わせる勇気がなく、ただうつむいたまま、時が止まったような沈黙が流れる。
母の気配が隣にあるのに、そこだけ別の世界。
鼓動の音が聞こえてしまいそうで、息を潜めた。
ほんの数秒の出来事。
けれど私には、その短い時間が永遠のように感じられた。