明治、一目惚れの軍人に溺愛されて
桐島中尉は受け取った軍服を肩に掛け、慣れた仕草で袖を通した。

そして私と同じように、晴れ渡った空を仰ぐ。

先ほどまでの雨が嘘のように、雲ひとつない青が広がっていた。

「では、私はこの辺で失礼いたします。」

そう言って母へ軽く一礼した後、ふと私に視線を向ける。

「……またお会いできることを祈っています。」

心臓が跳ね、言葉が詰まる。

必死に唇を動かして「はい」と答えるのが精一杯だった。

彼は静かに微笑み、背を向けて歩き出す。

軍服の背中が次第に人混みに紛れていくのを、私はただ見送るしかなかった。

胸の奥に残ったのは、雨の匂いと、彼の温もり。

そして――「また会える」という約束にも似た言葉。

私は立ち尽くしたまま、その余韻に心を震わせていた。
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