明治、一目惚れの軍人に溺愛されて
慌てて首を横に振る。

そして勇気を振り絞って、かすかな声で告げた。

「私も……会いたいです。」

勇気を振り絞ってそう告げた瞬間、桐島中尉の表情が揺らいだ。

次の瞬間、強い腕が私の肩を引き寄せる。

「あっ……!」

驚きに声も出せないまま、私は彼の胸に抱きしめられていた。

「雪乃さん……」

低く熱のこもった声が耳元に落ちる。

その響きに、心臓が破れそうなくらい跳ね上がった。

「もう、会えないかもしれないと……ずっと不安でした。」

私は腕の中でもがくこともできず、ただ息を詰めていた。

けれど、不思議と怖くはなかった。

むしろ、胸の奥は温かく満たされていく。

「私も、不安でした。」

桐島中尉の胸に抱かれながら、絞り出すように言葉を返す。

「雪乃さん……」

私の名を呼ぶ声が、耳元で震える。

「もう不安になんかさせない。」

その言葉に、胸が熱くなり、涙が込み上げそうになる。
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