明治、一目惚れの軍人に溺愛されて
「来週も……先ほどの茶屋で会いましょう。」

「中尉……」

震える声で名を呼ぶと、彼はようやく腕をほどいた。

「すみません、俺……ずっとくっついたままで。」

「いいんです。」

口から自然にこぼれた言葉に、自分でも驚く。

――伝えなければ。

この気持ちを飲み込んだままでは、きっと後悔する。

彼が私を見つめる今こそ、伝えるべき時だ。

胸の鼓動が早鐘を打つ。

けれど、不思議と恐れはなかった。

ただ、彼に知ってほしかった。

「私……桐島中尉のことが……」

言葉を続けようとした唇が震え、次の言葉が出てこない。

それでも、視線は逸らさず、まっすぐに彼を見つめていた。

「それ以上は言ってはいけません。」

桐島中尉の声に、私はハッとした。

――私、はしたないことを?

まだ「また会いましょう」と言われただけなのに。

女から先に想いを口にするなんて……。
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